働く女性の健康指針の背景

  昨今、人に投資することで企業全体の生産性や業績が向上するという健康経営の考え方が、日本全体の職場に浸透しつつあります。
 実際に、健康経営優良法人に認定された企業の株価が上昇し、健康経営の効果が実証されつつあります。
 健康経営優良法人の認定基準に女性の健康保持・増進が初めて組み入れられたのは2019年の大規模法人部門であり、2021年にはその基準が中小規模事業所にも拡大されました。
 しかし、「就労女性の健康保持増進のための取り組みとは具体的に何を指すのか」という明確な指針がないため、労務担当者や現場では混乱が生じていました。

 我々は、女性の職場定着とキャリア向上を意識し、①職場の環境整備、②性別役割分業と仕事の両立という我が国の女性の課題として、育児と介護と仕事の両立、そして、乳がんが就労世代に増えていることからこれまで職域でのがん対策はほぼ皆無でしたが、③疾病と仕事の両立という3つの領域におけるチェックリストを作成しました。

 本チェックリストの使用方法ですが、各項目について取り組みが職場で行われていれば1点、行われていなければ0点となりますので、満点34点で、算出していただければ、それぞれの職場における点数が分かります。特に何点以上が合格点ということもありませんので、自己評価スケールとして利用していただければと思います。

 また、最近では、運動、栄養、体重管理などの個人データがデジタルデバイスアプリケーションで管理されることが一般的になっていますが、多くのアプリケーションが販売されている中で、その有効性や信頼性が不明なものも多くあります。そのため、職場でどのアプリケーションを従業員に使わせるべきか判断が難しいという課題があります。

 そのような状況の中、令和4年度のAMEDヘルスケア社会実装基盤整備事業に、日本産業衛生学会学術委員会から推薦された私たちの研究班「働く女性の健康に関する非薬物的介入のシステマティックレビューと職域における女性の健康保持増進に向けた指針(働く女性の健康指針)作成」が採択されました。
 この研究班には、これまで就労女性に関する研究を行ってきたさまざまな専門分野の研究者が集まり、非薬物的介入としてデジタルデバイスアプリケーションの科学的根拠を国内外の研究から整理し、エビデンスに基づいた就労女性の健康指針を作成しました。

働く女性の健康指針の構成

  働く女性の健康指針は、デジタルデバイスアプリケーションのエビデンスとチェックリストの2部構成となっています。

チェックリスト

チェックリストは、現代の就労女性の産業保健の重点領域を反映しており、①職場の環境整備、②妊娠・育児支援、③疾病と仕事の両立支援の3つの領域から構成されています。
チェックリストの開発に際しては、1)労務担当者、2)就労女性、3)産業保健スタッフに加えて、フェムテック事業者を含め女性を積極的に雇用している12社の企業から成る外部組織委員会を設立し、意見を集めながらブラッシュアップを行い作成しました。

働く女性の健康指針の対象者

  対象は一般職場で働く女性労働者です。デジタルデバイスアプリケーションは、医療機器ではないソフトウエアサービス、つまりnon-SAMDが対象です。つまり、健康女性における一次予防が目的のアプリケーションで、病気を治療するためのアプリケーションではありません。

 つまり、更年期障害や産後うつなど病気をすでに発症している場合の、治療を目的としたSAMDではないということです。今回の我々の対象は、一次予防、病気ではなく、健康増進を目的とした健康課題を対象にしていますことご留意ください。

Non-SaMD(ノンサムディー)とは、健康増進などの目的で利用されるデジタル技術で、Software as a Medical Device(SaMD)の非医療機器を指します。

 

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あなたの職場環境をチェックしてみましょう!

職場における女性の健康保持・増進に向けた指針(働く女性の健康指針)の公開と、働く女性の健康に関する薬を使わない治療的なアプローチについての研究論文などの情報を提供することを目的としています。

  • WWHでは、女性の健康保持・増進に向けた職場の環境整備に必要と思われる64項目のチェックリストを開発しました。
  • 以下から、ご自身に当てはまるカテゴリーを選んで、あなたの職場がどれくらい女性の健康保持・増進に力を入れているのかをチェックしてみましょう。