チェックリスト妥当性検証

効果検証

 本研究班で提案するチェックリストは、就労女性健康研究会(https://sites.google.com/view/wwh1999/)が2008年に作成した「男女労働者の職場づくりチェックリスト」と平成29年経済産業省が実施した「働く女性の健康推進」に関する実態調査から、女性労働者への要配慮項目を参照し、就労女性の健康チェックリストたたき台を作成しました(図1)

図1.指針の作成

 当初64項目あったチェックリストは、東京証券取引所上場企業(92社)、秋田県内企業(534社)、インターネット調査(1700社)の労務担当者を対象に、チェックリストの総得点と管理職、正社員、退職者の女性割合等との相関を検討しました(図2-1、2-2、2-3)。さらに、就労女性3000名を対象に、チェックリストの得点が女性労働者の満足度を上げ、バーンアウト得点を抑制的に下げることを確認し(図3)、産業医を中心とする産業保健スタッフ21名、企業11社からなるPPI(Patient and Public Involvement)外部組織委員会の意見を採り入れながら、職場環境(20項目)、育児・介護の両立(8項目)、疾病との両立(6項目)の3つの重点領域合計34項目のチェックリストを開発しました(https://www.med.akita-u.ac.jp/~pbeisei/)。

図2-1.各重点領域得点と女性・男女正社員・管理職職員数(東証上場企業94社

図2-2.各重点領域得点と女性・男女正社員・管理職職員数(秋田県内企業534社)

図2-3.各重点領域得点と女性・男女正社員・管理職職員数(インターネット調査1700社)

図3.チェックリストと労働生産性

 2023年10月13日~10月16日に、インターネットリサーチモニターに登録している20歳~69歳の有職者女性3,343人を対象に調査を実施しました。有職者女性のチェックリストは、2つの領域で構成されています。第1の領域(職場環境に関する15項目)と、第2の領域(妊娠、育児、介護、病気などのジェンダー責任と仕事の両立に関する11項目)です。コペンハーゲン・バーンアウト・インベントリー(CBI)を使用して、個人的バーンアウト(PBO)、仕事関連バーンアウト(WBO)、顧客関連バーンアウト(CBO)のスコアを推定しました。CBIの質問項目のリンクはこちら

 満足度は、「現在の職場にどの程度満足していますか?」という質問により、0~10のVidual Analog Scaleで測定しました。仕事の生産性は、WHO-HPQアンケートを使用して、絶対的プレゼンティーイズムとアブセンティーイズムを評価しました。職場を離れる意向については、過去1年間の状況について尋ねた。線形回帰分析および修正ポアソン回帰分析により、チェックリスト2のスコアと燃え尽き、満足度、労働生産性、離職意向との関係を調べました。

 CLスコアの平均値は26点満点のところ、5.8点と非常に低かったです。このことは、一般職域における職場での女性の健康に関する取り組みをしている職場は非常に少ないことを示唆します。

 チェックリストの高いスコア値が高いと、各種バーンアウトの数値は有意に低下することが確認できました。PBO(β -0.32、95% CI: -0.435、-0.196)、WBO(β -0.30、95% CI: -0.395、-0.207)、およびCBO(β -0.17、95% CI: -0.276、- 0.065)また、同様に、チェックリストの高いスコア値が高いと、プレゼンティズムの絶対値が増加(β 0.43、95% CI:0.336、0.516)し、 満足度も高くなることが分かりました(PR 1.40、95% CI: 1.315, 1.495)。

 この調査結果から、職場での取り組みが高ければ、就労女性のバーンアウトを抑制し、労働生産性や満足度が上昇するということが示唆されました。作成したチェックリストを用いて、それぞれの職場に活用していただきたいと思います。